この度、SUNDAY ISSUE では、あらゆる情報・イメージが叛乱するインターネット時代の感性を持った現代アーティスト、谷口真人の個展「アニメ」を開催いたします。
谷口は東京藝術大学大学院の先端芸術表現科出身、作品は日本屈指の現代美術のコレクターとして知られる高橋龍太郎氏によるアートコレクション「高橋コレクション」に所蔵され、2009 年、村上隆、奈良美智、小谷元彦などが参加した「neoteny japan」展の作家たちに次ぐ若手として「neoneo 展 Part1[ 男子]」(高橋コレクション日比谷)に出展。「美術手帖」では2010 年代を担う旗手として紹介されるなど、今後の活躍が期待されるアーティストです。またその同時代的な感性から、アート業界にとどまらず、ファッション関係、IT 関係者など、幅広い層からも支持を得ています。
本展ではこれまでの鏡を用いた作品から、新作の平面作品、ドローイングまで、期待の新人アーティストが描くビジョンを一望できる貴重なエキシビションです。

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生きてきて出会った人々は、どんどんと記憶になり、空想と混じり合う。

確かに在るけれど、さわれない。

何かに媒介させなければ、現実世界ではもう出会うことができない。

私はそこに「存在」するということの不思議を見る。

谷口真人
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童話やアニメのキャラクター、アイドルなどの少女たちは、身体を奪われ、消費され、代替可能なも
のとして不安定に存在し続ける社会のイコンである。谷口が描く肖像には、そのかわいらしいアイコンの裏側に、儚く、崩れやすく、変容し、実体をもたない「存在」が浮かび上がる。そこに「かわいらしさ」の本質が見出せると谷口は言う。谷口の絵画表現は、身体を喪失した彼女たちの「存在」を抽象化し、純度の高い透明な存在として、絵画のなかで再び生命を与える試みでもあるだろう。
しかし谷口は、普遍的に内在する「かわいらしい女の子」の姿を現実世界に抽出する一方で、その対象を見つめる自分自身を乗り越えるかのように、絵の具をドロドロに固めたり、描く際に自らを拘束する条件を強いるなど、「イメージそのものには永遠に触れられないこと」へのメタファーとして、絵画自体の「物質性」を突きつける。一見、矛盾する二重のまなざしが向けられるとき、その痛切な摩擦によって、より深い「存在感」を私たちに残しているのだ。
また、今回の展覧会タイトル「アニメ」には様々な意味が内包されている。
animation の語源である「anima(魂)」、転じて「animation( 絵に動きを与えて命を吹き込むこと)」の意、そして「anime」とは、簡略化された和製英語が意味を持ち、近年では「日本製のアニメーション」そのものも示す。ここでは、その言葉がもつ多義性に作品や作家自身の態度を重ねている。
ゲストキュレーター 塚田有那

【Artist Profile】
谷口真人 / Makoto Taniguchi

1982 年 東京都出身

2007 年 東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻 修了
2007 年 「Project The Projectors」  東京芸術大学取手校地、取手
2007 年 「アートアワード東京」  丸の内行幸地下ギャラリー、東京
2009 年 「Makoto Taniguchi: Your Cinderella」 来来、東京
2009 年 「neoneo展 Part1 [男子] 」 高橋コレクション日比谷、東京
2010 年 「OPEN STUDIO」 作家スタジオ、東京
2011 年 「Naivery Manners」 island medium、東京

【report】