ビアンカ・キャサディの作品を読み解くためのキーdate:2011.01.25

ビアンカ・キャサディの作品を読み解くためのキーとして、彼女が今回特別に語ってくれた彼女の中の別の人格たちの背景や性格について、以下に紹介します。
これらの人格は突然彼女に現れ、ある一定の時期彼女を支配し、一人が過ぎ去ってしばらくするとまた新たな人格が現れるそうです。
最後に現れたのはRupertという人格で、現在は次の新しい人格の出現を待っているそうです。
これらの人格は彼女の作品の中にしばしば現れます。また、彼女自身がそれぞれのキャラクターに扮装してパフォーマンスをしたりもします。
現在展示されている作品以外にも、カタログに掲載されている作品の中にも彼らが登場しますので、是非探してみてください。

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TEA CAKE(ティー・ケイク)
私の詩を読む時の人格。おそらく1930年代かそこらへんの初期ブルースの時代にアメリカの南部から来た男性。彼の姿を絵に描いたこともあるけど、基本的にはTea Cakeは私の声の化身。彼が初めて現れたのは、私たちの最初のアルバム「la maison de mon reve」の時。

RED BONE SLIM(レッド・ボーン・スリム)
Tea Cakeの次に現れたのがRed Bone Slimで、私のビジュアルアーティストとしての人格。彼は黒人でありネイティブアメリカンでもあり、二つの異なる人種を持った男性。私の左腕にはRBSのタトゥーが入っているわ。
これが私の性別に関する転機の始まりだった。

MAD VICKY(マッド・ヴィッキー)
その次に現れたのがMad Vicky。夢の中で私はMad Vickyで、彼女はホームレスで大都市の中を裸足で割れたガラスの上を歩いてさまよっていた。現実の世界であるカツラを見つけ、それをかぶると私はMad Vickyになるの。彼女はラテンアメリカ系の売春婦で歳は40過ぎくらいだと思うんだけど、彼女の人生は波瀾万丈だったから実際の歳よりももっと枯れて見えたかもしれない。彼女はCrack(=コカイン)中毒でとてもワイルドで社交的な性格だったから、私がMad Vickyになっている時は何だって出来る気分になったし、誰とでも話せたわ。私にとってこのCrackっていうのは単なるドラッグではなく霊的なもので、内的な精神世界のことについてを意味しているの。例えばCrack Corm(コカイントウモロコシ)っていうのが私の作品の中によく出てくるんだけど、それも同じような意味で、トウモロコシはネイティブアメリカン・カルチャーから来ていて自然の儀式を意味している。

RUPERT(ルパート)
Mad Vickyの次に現れたのが、黒髪でとても内向的な性格のRupert。それぞれの人格はたいていの場合、髪から始まることが多いわね。Rupertは男性だけど非常に女らしくて、ゴシックタイプで、詩を書いたり読んだりするの。また彼は魔術やサイキック・リーディングやタロット占いに夢中で、自分のタロットカードのセットを作ったりもしたわ。ボンデージやわずかな自傷行為も行うけど、それらはあくまでも儀式的なもので、いつも一人だった。
(※カタログの裏表紙に使用されている写真はビアンカがRupertに扮装しているものです)

Tea CakeとRupertはとても異なった性格だが、彼らは同じ詩を書く。おそらくRupertが詩を書き、Tea Cakeがそれを読む。
私は、私の詩が男性の声によって読まれているのを聞くと、それがもっともまっとうな気がする。また、それがアメリカ南部の黒人男性の声だった場合、より良く感じるわ。

——– ビアンカ・キャサディ談